「これ以上の趣味はないってくらい仕事と趣味がつながってるね」
アメリカのヴィンテージおもちゃを日本で販売するパイオニア。
スーパーフリークス店長の寺口晋平さん、登場!
SUPER FREAKS VINTAGE
掘り出し物を買いつづけて感性を磨いてきた
──今のお仕事について教えてください
寺口 アメリカのおもちゃとか、アンティークをみつけて販売しています。
──どんなキッカケではじめたんでしょう 寺口 学生のころアメリカに行って、おもちゃとか雑貨が好きでよく買っていたんですね。そのうちに何回もアメリカに行きたい気持ちがおさえられなくなりました。
「おもちゃを売って商売にすれば、何回も行けるんじゃないか」と思って、今の仕事をはじめました。
──お店の名前と名付けた理由を教えてください
寺口 お店の名前は「スーパーフリークス」です。1980年ごろに原宿でお店をだしたころからずっとこの名前でやっています。
当時、「フリークブラザーズ」というコミックがアメリカのアンダーグラウンドで流行っていました。カリフォルニアにあこがれて、その名前をもってきました。
──37年も前に開業したんですね!そのころはアメリカのおもちゃを扱っているお店もなかったのでパイオニアですよね。今の業界に問題意識を感じることはありますか
寺口 みんなオリジナリティがある好きなことをやればいいのに、と思うかな
。昔と比べて「やりたいことを仕事にする」という人は増えたと思うんだけど、みんな同じことをしていると思うんだよね。それって好きなことなのかな、と。
──同じようなことをみんなでしてしまう理由はなにかあるんでしょうかね
寺口 かっこつける余裕がないんじゃないかな。食っていくのが精一杯というか。人件費とか店舗の維持費とか、お金が必要だからさ。
──昔はもっとみんな「これを買うために働くんだ」というところがありましたよね。
寺口 今はいろいろとお金がかかる世の中になりましたよね。
お金がかかるから、ファッションなんてあまったお金で安いもの買う人が増えちゃって。こだわる人が減ったよね。
──仕事をしていて「うれしいな」と思うことはありますか
寺口 掘り出し物をみつけたときかな。なかなか人には教えられない探し方をしているんだけど、掘り出し物をみつけたときにはうれしいね。
──ビジネスを教えてくれるような先輩もいなかったわけですよね?どうやって仕事を覚えていったんでしょう
寺口 「買って覚えた」ということですね。最近はネットで価格相場を調べるのが主流になってきていて、「仕入れでミスをしない」ということが重視されすぎています。
フリマでも店主の目の前でケータイだして調べる人もいますからね。失礼だと思うけど。
私がはじめた当時はネットも今みたいな状態じゃなかったから、失敗もたくさんしましたね。
──とくに失敗したなぁと思うことはありますか
寺口 基本的にトレジャーハンターだから、小さな失敗はよくありますね。とんでもないものをつかまされたという失敗はないですけど。
仕入れよりも、販売では「あの商品、安く売りすぎたなぁ」と後悔することはありますね。
──これから先、目指したいことを教えてください
寺口 「一発当てる」だね。
──「一発当てる」とはどういう意味ですか?
寺口 自分が得意としているジャンル以外で一発当てたいね。
たとえば、かけじくとか。感性で当ててみたい。
──情報が少ない時代から肌感覚を養ってきたシンペイさんならではの思いですね
寺口 昔の仕入れは自分の感性を磨いてよい商品を買っていくしかなかったからね。
よいものを見極める感性はずいぶんと鍛えられていると思いますよ。
(1930~1940年代ごろの生地)
──今でも仕入れはアメリカへ足を運ぶんでしょうか
寺口 今はあまり仕入れをしませんね。販売もネットが多いです。店舗経営を長年つづけてから、一度お店をたたみました。
そのあと、ネットショップとして復活して、しばらくしてから神奈川県の三浦でで店舗を構えました。
──ネットショップだけの運営ではなく、店舗を構えたのはなにか理由があるんですか?
寺口 ネット販売だけだと、人とのやりとりがないからね。
来てくれるお客さんとの会話を楽しみたいから三浦でお店を復活させました。
──店舗を経営していて苦しいなと思うことはありますか
寺口 人がぜんぜん来ない日もあることですね。売り上げを伸ばすことだけを考えると都会で店舗を構える意味はなくなってしまったから、空気がおいしい場所でお店をもとうと思って、今の三浦という立地を選びました。
それでも、原宿とかでやってたころと比べると人が少なくてさみしいね。都心で商売していたころは売れない日があっても人は来てくれていた。
三浦っていう土地柄だと、人が来てくれない日もあったりして。今日なんてインタビューに来てくれるっていうから楽しみにしていたんですよ(笑)。
──私たちもお話を聞かせてもらえてうれしいです(笑)。三浦という立地を選んだ理由はあったんですか?
寺口 三浦は湘南などと比べてマイナー感があって、おもしろいと思ったんです。
実際に三浦まで足を運んでもらうと、湘南にはない景色等の面白味があります。そんななかにいきなりスペシャルのお店をオープンさせ、来客者を驚かせようとしました。
でも流石に田舎過ぎて誰も来ません。
──今の売り上げはほとんどネットショップですか
寺口 そうですね、ネットのオークションなんてよくつかいます。最近はオークション終了時間まで起きていることが少なくなって、朝に目が覚めてから「お、落札されてる!」と喜ぶことが多くなりました。
ツタンカーメンが「古いものに価値がある」と教えてくれた
──ご両親の好きなところ、嫌いなところについて教えてください
寺口 父はがんばって兄弟3人を育てててくれました。金銭的な部分でもいまだに頭があがりません。
母には今でも怒られたりしますね。母は私と性格が似ているから、うまくいかないこともあります。
父はかなり温厚で、怒られたことはまったくなかったかな。
──息子さんにもあまり怒らない?
寺口 怒る必要がなかったからね。わがままに育てたってことになるんですかね。
学生のころは頻繁にアメリカへ一緒に行かせていました。バブルで景気がよかったからね。私に似て、マニア気質をもっているのがちょっと心配ですけど。
──みんなからはどんな名前で呼ばれていますか
寺口 「シンペイ」が多いですね。「ペイ」と発音する名前って私たちの世代で珍しかったから。
──これまでの人生を振り返って、印象に残っている体験を教えてください
寺口 「古いものに価値がある」と知ったキッカケはツタンカーメンです。
上野で展示がやっていたんですけど、小さいころ、母につれられて見に行ったんですよ。それからですね、古いものが好きになったのは。考古学者になりたいと思った時期もあったほどです。
──ストレスを感じることはありますか
寺口 都心で店舗を経営していたころはストレスのかたまりだったかなぁ。自分の時間がもてないとか、支払いとかのストレスが大きかったですね。
「商品をみつけてきて、売る」という仕事自体はよかったんだけど。
──独特な習慣はありますか
寺口 わんこがウチに来てから、散歩するようになりましたね。昔はぜんぜん外に出なかった時期もあったけど、わんこが9年前にきてから人生がずいぶん変わりました。
(お店のトイレ)
──趣味はあるんでしょうか
寺口 この仕事がそのまま趣味ですね。これ以上の趣味はないよね(笑)。それくらい好き。
──尊敬する人について教えてください
寺口 歴史上の人物を尊敬することもあるけど、出会う人ひとりずつ尊敬してるよ。とくに奥さんは尊敬してるかな。
──「こだわってるな、すごいな」と感じることはありますか
寺口 お客さんですね。「なんでこんなおもちゃにお金をつかうんだろう。すげぇこだわってるな」と思います。
若いときは高級なお店とかみると「すげぇなー」と思ってたんですけど、今は「金かけてるだけじゃん」と思うようになってきました。自分がせこくなってるのかなと思ったりします。
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