「みんなで作り上げたカラーワークスという文化を止めずに続けていきたい」
熱心にお話される株式会社カラーワークス秋山千恵美さん。
株式会社カラーワークス
人生の方向を決めたアメリカでの20分間
―なぜカラーワークスを始めたのでしょうか。
秋山 私がアメリカにいた頃のふとした瞬間がきっかけでした。 「チエミ、どの色がいい?」 「この色が好き」 友人から聞かれた質問にそう答えると、私が選んだ色で小さな壁が綺麗に塗られました。
わずか20分程度の出来事でしたが、自分が選んだ色を表現された嬉しさにドキッとしました。 バブル世代の大学時代の友達には「チエミちゃん、ペンキ屋さんなの?かわいそう」って言われましたけどね。
―表現する喜びに気づいた瞬間だったのですね。
秋山 生まれて初めて自分が好きな洋服を着た時や、口紅を付けた時にも同じ感覚がありました。色で表現することにワクワクする自分に気づき、これを仕事にしたいと思いました。
亡くなった父から「仕事でも遊びでもいいから、好きなことを見つけたらいいよ。そうすれば絶対幸せになるから」と言われた影響が大きかったと思います。
※グッドデザイン賞を受賞した自社ブランドHip1488色揃え
―なぜカラーワークスという社名を選んだのでしょうか。
秋山 もともとアメリカのペイントメーカーを輸入することから始まった事業でした。
当時の社名は輸入元メーカーのブランドネームがついていたのですが、契約の関係で外すことになりました。私は当時からカラーワークスという名前がすごく気に入っていたので、今もそのまま使っています。
―ビルにも名前があると伺いました。
秋山 私が建物にパレットと名前をつけました。絵の具は赤色と黄色を混ぜると、どちらでもない新しい色ができます。
人が混ざることで新しい文化が生まれるという意味を込めてカラーワークスパレットビルと呼んでいます。
失敗に意味があると思うと謙虚に受け止められる
―失敗した時どうしましたか。
秋山 最近は人生で起こること一つずつに意味があると思い、失敗を謙虚に受け止めらるようになりました。
失恋しても「あの人と結婚しなくて良かった」と思うことに似ています。
何か起きたときに「これは意味があるのではないか」と考えられる大人になれてきました。
―仕事で楽しいと思うことはありますか。
秋山 社員が成長していく姿を間近で見られることが楽しいです。求人の募集で入ってきてくれたり、飛び込みで入社してくれた社員もいます。その社員たちが面白いと思ったものを自分流に考えて提案したり、やってみたいことを伝えてきたりしてくれます。
自分が10年や20年前に面白いと思ったことを20代や30代の社員から「面白いですよ!これいいですよ」と言われることにも大きな喜びを感じます。
―長年カラーワークスさんと関わっていると、社員のみなさんがとてもいい色に染まっていくことを感じます。働いていて楽しいんだなということが伝わってくる笑顔です。
秋山 社員が全体で26名ほどですが、私の目が届く範囲で経営を続けたいと思っています。
例えば、何かいいことがあった時、自分がお金を出してでも連れて行ける人数が一番ちょうどいいと思っています。そう考えると、30人くらいまでがちょうどいい人数です。必要以上に大きくせず、社員が幸せになることを見つけたいです。
自分の中で止めずに流すことでストレスを解消する
―行き詰まりを感じたとき、どのように対処していますか。
秋山 まず寝ることです。考えられるところまで考えて、あとは寝るようにしています。寝てしまえばなんとかなると思っている自分がどこかにいますね。
私にとって会社は部活に似ていて、人に励まされて続けられることがよくあります。かっこいい言い方ではありませんが社員たちに随分と励まされています。
―社員との信頼関係が築かれているんですね。
秋山 苦しいことや楽しいことも社員に共有するようにしています。
あとは海へ行ったり、自然に触れるようにしています。自然が好きなので、東京だけにずっといるとおかしくなりそうな時があります。自然の中でいつもと違うことをして戻ってくるとリフレッシュになります。
―船に乗ることも多いと伺いました。
秋山 小さなボートを持っていて、一人でも乗りに行くことがあるくらい好きです。ちょっとした気分転換になります。
あとはテキーラが好きで、テキーラソムリエも取得しました。興味を持ったらすぐ行動を起こさずにいられなくなるタイプなので、趣味が多くなります。
―ストレスはどのように対処していますか。
秋山 ストレスを自分の中で止めずに流すようにしています。ストレスが迫ってくる瞬間はとても嫌ですが、寝たり食べたりしてストレスを外へ流すようにしています。
あとは普段と違う人たちとお酒を飲むこともあります。自分の中だけにストレスを止めないようにしています。
―習慣にしていることはありますか。
秋山 朝の30分で本を読むようにしています。人から紹介された本とか、頂いた本に目を通すようにしています。そうするといい情報が入ってきますね。
つながりを意識して次の形を作っていきたい
―社会への問題意識はありますか。
秋山 日本では暮らしの感性が成長しづらいことですね。
アメリカやヨーロッパへ行くと、自分の洋服を着替えるように家を造っています。しかし、日本では周りの目をを気にしてしまうことが多いです。
私が家のコンサルティングをしていたときの話ですが、寝室の色を決める際に「これ、おかしくないですか?」と言われたことがあります。誰から見ておかしいのか聞くと「人から見ておかしいのではないかと思って」という返事がありました。
※毎日をウキウキな気分にさせてくれる彩り
―他人の目を気にしてしまうのですね。
秋山 実際は寝室に人が来ることはありません。それでも、他人の目を気にする人も多いです。それは日本人が持つ美しさでもあるので簡単に否定することはできませんが、気にしすぎる必要もないと思います。
最近はインターネットとSNSの発展でお客さまから「こんなデザインがいいです」と言われ始めるようになりました。少し前まではこちらからの一方的な提案が中心でしたが、これからは双方向で意見を交換できる流れになってきそうです。
お客さまとの距離が近くなり始めているので、今後の変化に期待しています。
※トイレもカラフルデザイン
―大切にしていることはありますか。
秋山 つながりを大切にしています。私が日本に生まれたことや私の周りで起こること、すべてに意味がありつながっていると思います。
今までも課題を自分と切り離さず、受け止めることで次の形につながってきました。これからもつながりを軽視せず、受け止めることを大切にして生きていきます。
インタビューを終えて
今回のインタビューでは数人の社員の皆さんにも同席して頂きました。
「普段は聞けない千恵美さんの人生観やこだわりが聞けて幸せな時間でした」
感想を述べる皆さんの姿から、社員と会社が共に成長し続けている文化を感じました。
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